【第一章】初恋メロディ

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【第一章】初恋メロディ

ジリリリリ‥! 清々しい夏の朝空に突然、 けたたましい目覚まし時計のアラーム音が鳴り響いた。 しばらくすると、別の目覚まし時計が鳴った。 ジリリリリ‥!ジリリリリ‥!! そうこうしている間に、 次の目覚まし時計が鳴った。 ジリリリリ‥! ジリリリリ‥!!  ジリリリリ‥!!! 合計5つもの目覚まし時計の音が揃った。 5つも揃うとかなり壮絶な音だ。 「あーもー、うるさいなー!」 凛は眠たそうに目をこすりながらベットから飛び降りた。 立花凛(リン)。 丘の上小学校5年生の女の子だ。 大きな二重に切長の目をした可愛いらしい顔立ちをしている。 凛はベット横の、女の子らしいピンクの装飾がついた目覚まし時計の横をすり抜けて、部屋の横に付いている窓を勢いよく開けた。 窓から隣家の陽翔(はると)の部屋が見えた。 凛の部屋と陽翔の部屋は2階にあり、お互いの部屋が隣合っていて、窓も向き合っていた。 「ハルくん!うるさい! 目覚ましの音、なんとかして!」 しばらくして、窓から男の子が顔を出した。 「りんちゃん、おはよう‥」 男の子は眠たそうに目を擦った。 山咲陽翔(はると)。 凛と同じのクラスの男の子だ。 こちらも大きな目をした可愛いらしい顔立ちをしている。 年齢より少し幼い感じがする。 凛は不機嫌そうな顔で言った。 「おはようじゃないわよ。 目覚ましの音なんとかしてよ。 毎日これじゃ寝不足よ。 私、ハルくんみたいに早起きじゃないの。 もっと寝ていたいの」 「ごめん。リンちゃん。 すぐ止めるよ」 陽翔は窓から頭を引っ込めると5つの目覚まし時計を止めた。 「5つも目覚まし鳴っているのに起きないなんてどういう神経してるの?」 凛は呆れたように陽翔に言った。 陽翔は照れたように笑いながら首の後ろをかいた。 「だいたい、ハルくんが眠れないからって遅くまでおしゃべりに付き合わされてるのはこっちなんだからね。 毎日毎日寝不足よ。 夜更かしは美容に良くないってママも言ってるの。 凛がブスになったらハルくんのせいだからね! ね?ハルくん聞いてるの?」 陽翔はニコニコしながら凛の話を聞いていた。 陽翔の寝坊はひどく、陽翔の母親が声をかけても起きないため、目覚ましの数を増やし、ついには5個にまで増やしたのだった。 それでも起きない時はこんな具合に凛に起こされている。 「一人で起きてよね。 私、ハルくんのお母さんじゃないんだよ」 凛は腕を組んで怒ったように横を向く。 怒ってはいない。 陽翔の役に立ってるのが嬉しいのだ。 ただ素直にそう言うのは恥ずかしい。 そして陽翔はそんな凛の顔を見るのが好きなのだった。 2人は同級生だが、凛の方が陽翔よりずっと背が高く、凛の後ろをついて回っていた陽翔はよく弟に間違えられていた。 凛もそんな陽翔を弟のように可愛がっていた。
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