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『求められると嬉しくて
元カレの気持ちを
試すために断ったりして
自己肯定感を上げてたの。
でもやったらいけないことだった
[中略]
次の彼(今の夫)からは
全く求めてもらえない
罰を受けているみたい』
サンダーバードの窓側席で
俺は、[いちごの粒々]さんと
[グラータ]さんのツイートを
読んでいる。爽やかな水色の
座席は、交換されてから、
10年経っておらず弾力がある。
身体が軽くなったように感じられた。
備え付けの簡易テーブルを倒して
セットをしてみる。いい感じだ。
だが、加賀駅で購入した柿の葉寿司を
鞄から出して、広げる気にはなれない。
人生初の既読スルーを始めてから
2時間以上が過ぎているからだ。
こんな状況で食事を楽しめるほど
俺の神経は、鈍くも図太くはない。
“レスり” 、“レスられ” 等の言葉が
この数年で急速に敷衍しつつある。
仕事柄、この手の相談は多い。しかし
俺が、離婚案件を引き受けるのは稀だ。
特に“レス”が原因である場合は。
どちらが加害者なのか、被害者なのか
よくわからない気持ちになってしまうのだ。
“レスり側”が浮気をしているならば
問答無用で有責。話は簡単なのだが。
そもそも、欲情を覚えない相手との、
抱け、抱かれろ、なんてのは拷問だろう。
しかし、世界で1番信頼できる
パートナーであるはずの相手から
拒絶され続けると、自分自身を
否定されたような気になってしまう、
絶望するというのもわからなくはない。
『配偶者とsexはしたくないけど
愛してるし、別れたくないって人は
レスられ側が、婚外で付き合ったり
sexをすることぐらいは認めてほしい』
[いちごの粒々]さんの
ツイートを読んだあたりで
サンダーバードは京都駅に着いた。
因みに、いちごの花言葉は “幸福な家庭” だ。
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