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おとなりさん
ピンポーン…
ピンポーン…
うっせぇ…しつけぇな…
ピンポーン…
ああ…もう誰だよ…ったく…
「あぁん!」
『ああ…何度も申し訳ない…今日、隣に引っ越してきた八幡です。どうぞ、お納め下さい』
「ああ…すんません、わざわざ…」
『いえ、大家さんに隣は若い男性の方だと伺ったもので、蕎麦よりこっちがいいかと…』
のしの下を覗くと、発泡酒ではない高級なビール。
「気ぃ使って貰ってありがとうございます。こっちが嬉しいっす」
『良かった。喜んで貰えたようで…』
「……」
『あ…あの…実は転勤で地方から出てきて、友人もおらず…』
ッチ…面倒くせぇな…
「そっすか、大変っすね」
『あ…単身で…良かったら…その…食事が美味しい店とか…教えて頂けると…』
ああ、マジか…でも、高級ビール貰ったしな…
「いいっすよ、部屋片付いたらうち来てください」
『いいんですか?嬉しいな。では夕方伺います』
「はい、んじゃ」
カチャリ…
っ何つーか…シャイなのか?モソモソ喋りやがって…でも、黙って立ってたらモデルみたいな奴だったな。キレーな顔と洒落た香水の匂い。服のセンスも…なかなかのもんだった。あれはいいとこの会社勤めかなんかだろうな。
夕方6時、インターフォンが鳴る。
カチャリ…
『どうも…お言葉に甘えて…』
「どうぞ上がって?」
『え?食事に行くんじゃ…?』
「いいから」
もう、めんどくさくて強引にお隣さんを部屋に引っ張り込んだ。
『あ…いい匂い…』
「そこら辺で食う飯より美味いと思うよ」
『え…ウソ…あなたが?』
「アキラ!…俺の名前!兵藤アキラ」
『アキラ…くん?』
「気持ち悪りぃな、アキラでいい」
『え…じゃあ、俺も…隼人。八幡隼人』
「ん…隼人な、歳いくつ?」
『27…アキラく、アキラは?』
「24、歳上かよ…見えねぇな…まぁいいや。座って食えよ」
『ありがとう…すごいご馳走様。全部、アキラ…が作ったの?』
「そ。俺、シェフ」
『うわっ、うわっ、すごいぃ!頂きます!』
ちっせぇ口でよく食べるな…そのほっそい身体のどこに入ってくんだ?
「ククっ」
『何?あっ、俺、がっついてゴメン…』
「いや…いいよ。あんた気持ちいいぐらいよく食うな。作った甲斐があったわ」
『だって、すっごい美味しいんだもん。止まんない』
だもんって…27の男が。
「あはは、隼人面白いな。気に入ったよ、俺さ、都内の王國ホテルでシェフしてるんだ」
『えっ?すごい…そんなスゴい人の手料理食べちゃったんだ』
「美味かったか?」
『うん、凄く…ありがとう、お金払うよ』
「ばっか、いらねーよ」
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