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隼人が見つからないまま、月日だけが過ぎて行く。
今日もため息を吐きながら家路に付く。
ポストを確認すると、一枚のハガキが入っていた。
差出人は空欄…
裏には小さなコテージとカフェらしき写真。
何だよ…宣伝かよ…そう思った俺はゴミ箱に放り投げた。
またひとつため息を吐きながら、ベランダでタバコを吸う。
俺の住所知ってるなんて気持ち悪りぃ…
って…おい!
俺はタバコを咥えたまま、ゴミ箱を漁ってハガキを引っ張り出す。
そしてあの時、隼人が置いてったメモと並べる…
同じ字じゃん…隼人…
けど、何で何も書いてねぇんだ?
写真をマジマジと見る。
映ってる店の名前…
【cafe & bar f L t T】
知らねぇ店だ…聞いたことない。
けど、隼人が送って来たって事は?
会いに来いって事だろ?
見つけて会いに来いって?
【あの子はね、あの容姿のせいで辛い思いをしてきたんだ。だから誰も愛さないし信用もしない。そんな隼人が俺に言ったんだ『初めて俺をただの友人として接してくれた人、その人が作った物以外は味がしない』好きなんじゃないのか?と聞いたら、好きだから…それを知られたくない人だって笑ったんだ。隼人のあんな笑顔…初めて見たよ。どんな高級な店に連れてってもあまり食べないし、いつも無表情なんだ。その隼人が健康的に笑うようになった。嫉妬したよ、俺にはこんな顔させられないってな】
「食べない?無表情?ウソだろ…あの人…俺が作った料理、めちゃくちゃ笑顔で食うぞ?」
【やっぱり君なんだな…】
「俺…」
【早く見つけてやるんだな、他に攫われる前に】
どんなにネット検索しても見つからない…
店の友人に聞いてもわからない…
どうしたらいいんだ…
そんな事を考えながら、今夜はホテルのバーにヘルプで入ってる。
「マスター、探してる店があるんだけど見つからねぇんだ」
【へぇ、何て店?】
「cafe & bar f L t T」
【んー、何かで見たような?ちょっと待ってろ】
はぁ…隼人、どこなんだ。
【アキ、ほらコレ…どっかで見たと思った、この雑誌】
「隠れ家…特集…あった… 【cafe & bar f L t T】…顔出しNGの美麗なオーナーが紡ぎ出す異空間…店の名前は愛する人へのメッセージ…」
【へぇ、イニシャルか何かかな?】
「違う…イニシャルじゃねぇ、何だろ?」
【オーナーに聞くしかねぇな】
「場所は…なんだすぐそこ…」
【車で30分ぐらいじゃん、電話番号も出さないなんて徹底してんな】
「隼人…待ってろ」
【何か言ったか?まさか、その愛する人って…お前なのか?】
「ふふ、多分な」
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