cafe & bar f L t T

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cafe & bar f L t T

カランカラン 『いらっしゃ…い…』 「まだいいか?」 『ええ…どうぞ…ビール…ですか?』 「ああ」 コトン 「ありがとう、いい店だな」 『ありがとう…ございます…あの…』 「雑誌で見たんだ…」 『ああ…ふふ…ある人に見つけてもらいたくて…一度だけ取材受けたんです』 「ふぅん、んで?見つけてもらったのか?」 『さぁ、どうでしょうか?』 「店の名前…意味あんの?愛する人のイニシャル…とか?」 『さぁ、どうでしょうか?』 「隼人…二年ぶりだ…」 『ええ…』 「探したんだぞ…」 『ええ…』 「会いたかった…」 『ええ…もう今夜は、閉めますね…』 「ああ…そうか…」 見つけて欲しかったのは、俺じゃなかった… 「ごちそうさま」 『いえ、今夜はアキラの貸切に』 「……」 俺は無言で残ったビールを煽った。 店を閉めた隼人は、俺に新しいビールを注いでタバコに火をつけた。 それに吊られて俺もタバコを取り出す。 隼人は俺に背を向けて、話し出した。 『アキラ…まずは…ごめん…そして、会いに来てくれて嬉しい…ずっと会いたかった…』 「うん…」 『あの日は、羞恥に耐えられなくて。このままそばにいたら、俺がゲイだって事も、遊んでる事もバレちゃうって…それが嫌で逃げ出した』 「うん…」 『また…もし会えたら…全部正直に話して…それで拒否されたら諦めようって決めた。アキラは…俺が最初で最後…愛した人なんだ…そう気づいて、でもアキラはノンケだろ?友人としてそばに居られればいいって思ってたのに。あんな醜態晒して、しまいにはこのまま抱いて欲しいって思ってしまった。あんな事させて、ホントにごめん』 「隼人…それ謝るなら俺もだ…あの日、ボロボロになったあんたをそのまま抱きたいと思った。最後…あんたのイった顔見て、射精してたよ…ガキみたいにな…俺も最初にあんたを見た時から好きだったんだ。気づいた時にあんたは、俺の前から消えた」 『アキラ…ふぅ…』 「泣くなって…なぁ隼人…俺今日…車なんだ…」 『うん…』 「なのに、ビール飲んじまった」 『うん…』 「今夜は帰れねぇ」 『うん…』 「明日は仕事休みだ」 『うん…』 「部屋、どっかあるかな」 『うん…あるよ。上…自宅なんだ…良ければ泊まってく?』 「いいのか?離せなくなっちまうぞ?」 『ベッド…ひとつしかないんだけど…』 「構わないだろ?」 『ふふ…うん…』
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