おとなりさん

1/2
前へ
/12ページ
次へ

おとなりさん

ピンポーン… ピンポーン… うっせぇ…しつけぇな… ピンポーン… ああ…もう誰だよ…ったく… 「あぁん!」 『ああ…何度も申し訳ない…今日、隣に引っ越してきた八幡です。どうぞ、お納め下さい』 「ああ…すんません、わざわざ…」 『いえ、大家さんに隣は若い男性の方だと伺ったもので、蕎麦よりこっちがいいかと…』 のしの下を覗くと、発泡酒ではない高級なビール。 「気ぃ使って貰ってありがとうございます。こっちが嬉しいっす」 『良かった。喜んで貰えたようで…』 「……」 『あ…あの…実は転勤で地方から出てきて、友人もおらず…』 ッチ…面倒くせぇな… 「そっすか、大変っすね」 『あ…単身で…良かったら…その…食事が美味しい店とか…教えて頂けると…』 ああ、マジか…でも、高級ビール貰ったしな… 「いいっすよ、部屋片付いたらうち来てください」 『いいんですか?嬉しいな。では夕方伺います』 「はい、んじゃ」 カチャリ… っ何つーか…シャイなのか?モソモソ喋りやがって…でも、黙って立ってたらモデルみたいな奴だったな。キレーな顔と洒落た香水の匂い。服のセンスも…なかなかのもんだった。あれはいいとこの会社勤めかなんかだろうな。 夕方6時、インターフォンが鳴る。 カチャリ… 『どうも…お言葉に甘えて…』 「どうぞ上がって?」 『え?食事に行くんじゃ…?』 「いいから」 もう、めんどくさくて強引にお隣さんを部屋に引っ張り込んだ。 『あ…いい匂い…』 「そこら辺で食う飯より美味いと思うよ」 『え…ウソ…あなたが?』 「アキラ!…俺の名前!兵藤アキラ」 『アキラ…くん?』 「気持ち悪りぃな、アキラでいい」 『え…じゃあ、俺も…隼人。八幡隼人』 「ん…隼人な、歳いくつ?」 『27…アキラく、アキラは?』 「24、歳上かよ…見えねぇな…まぁいいや。座って食えよ」 『ありがとう…すごいご馳走様。全部、アキラ…が作ったの?』 「そ。俺、シェフ」 『うわっ、うわっ、すごいぃ!頂きます!』 ちっせぇ口でよく食べるな…そのほっそい身体のどこに入ってくんだ? 「ククっ」 『何?あっ、俺、がっついてゴメン…』 「いや…いいよ。あんた気持ちいいぐらいよく食うな。作った甲斐があったわ」 『だって、すっごい美味しいんだもん。止まんない』 だもんって…27の男が。 「あはは、隼人面白いな。気に入ったよ、俺さ、都内の王國ホテルでシェフしてるんだ」 『えっ?すごい…そんなスゴい人の手料理食べちゃったんだ』 「美味かったか?」 『うん、凄く…ありがとう、お金払うよ』 「ばっか、いらねーよ」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加