12 愛する気持ち3

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12 愛する気持ち3

「ちょっと、虎鉄!」  千雪の告白がこのまま流されていきそうで、腕を突っぱね、逃げる素振りを見せたらそれがさらに興奮を煽ってしまったようだ。千雪の両腕を羽交い絞めにするように正面から抱きかかえ、熱い黒湯の中にざぶんと沈むと、今度は千雪の胸元を高い鼻先でまさぐってきた。  その刺激だけで昼間の熱が身体中に蘇り、千雪は細い身体をよじって身悶えるが虎鉄の腕は緩まることはなく痛い程締め付けてくる。 「こてつぅ、まっ」 「待てない! ずっと千雪の言葉、待ってたんだ」  そんな風に快活な言葉で素直に返され、千雪も歓喜で胸が一杯なところに折れそうなほど怖いぐらいに抱きすくめられた。 (虎鉄、すごく喜んでる!)  それだけでもう、天にも昇る気持ちだったのに虎鉄が続けてグラウンドの真ん中で出しているほどの大声で叫んだから流石に驚いて硬い胸板にしがみ付きなおしてしまった。 「俺もお前が大好きだ。白髪になるまで、一緒にいてくれ」 「し、白髪? 大吉爺ちゃんっぽい! 大袈裟! え、まって、あ……、あんっ!」  少しだけ身を離され、だがもう逃がさないとばかりに指を絡めて手を握られ、身動きを封じなられたまま、弱い胸先を食まれた。 「きゃうっ」  たまに舌先で押され、じゅっじゅっと吸われ続け、千雪は涙目で仰のいて唯一動く膝で虎鉄の脚を蹴りつけようとしたが力が入らずそれも叶わない。兆した前が虎鉄の引き締まった腹にもどかしく擦れる刺激にも耐え兼ね、涙声で訴えた。 「あー。千雪の乳首、ピンクでほんと可愛い。胸もすべすべ、柔やわ」 「恥ずかしいこと言うなよお」  そんな風にわざと千雪の周知を煽るようなことを胸の先で囁くから、鼻声で唇を尖らせると、虎鉄は上機嫌でなおも続けてくる。 「だってしょうがないだろ、着替えさせるたび触りたくて堪んなかった。たまにちょっと触ってたけど」 「この! むっつりスケベ! あんっ。前、で、でちゃうから。湯舟でぇ。かずにいぃに怒られちゃうう」 「俺の手の中、出せばいいだろ?」 体勢を変えられ、今度は湯船で胡座をかいた虎鉄の脚の間に横抱きにされて、片手を千雪自身にかけられ扱かれたまま、唇を吸われ、さらに胸の先まで今日に弄られたから、千雪はもう甘美な刺激に息も絶え絶えになった。 「ああっ、ひうっ」 「出せよ」 臀部に硬い虎鉄の高まりを押し付けられたままのみだらな体勢で攻め立てられ、千雪は呆気なく果てるとくたり、ぶくぶくと湯船に沈みかける。慌てた虎鉄の腕の中に即、すくいあげられた。 虎鉄は湯船の外で掌を振るう仕草をした後、切れ長の瞳を細めて愛しげに千雪を見下ろし、ふうふうと息をつく唇を今度は優しく啄んでくる。 「すげえ。幸せだ。千雪から好きって言われた。なあ、このまま、千雪ん中、入りたい。ダメか?」 「え、ここで? 昼間もしたのに!」 「何回だって、一晩中だってしたい。ほら、まだ柔らかいし」 そう言ってひたっと切っ先を押し付けられたから、ひいっと喚いて千雪は腰をもじつかせた。 すると虎鉄は天井からしたたった湯気で濡らした前髪の間から光る、色気漂う眼差しが覗き込みながら、千雪の手を淑女にするそれのように取ると視界に入るように指先や甲に懇願の口付けを送ってきた。 指先まで弾ける柔らかなリップ音が軽快で心地よく、千雪も知らず口元をほころばせる。 「なあ? お願い」 (なんだよ。可愛いじゃないか。虎鉄のくせに)  今まで虎鉄に甘えたことはあっても、こんな風に真っすぐに甘えられた経験は少なく、千雪は手を伸ばして前髪をかきあげてやると、気恥ずかしくて虎鉄の胸に顔を埋めながらも頷いた。 「いいよ。でも、ゆっくり、して」 「分かった」 脚を大きく開かされ跨るような格好に差せられて、腕を首に回すよう誘導されると千雪は自分が腰を落とした方がいいのか、それとも待った方が良いのか分からず、まろい臀を何度か虎鉄自身に押し付けては腰をひいてしまった。 「焦らすなよ」 「焦らしてないってば」 がしっと腰を持たれ、先を含まされたら、そのままゆっくりというのはどこへやら、どんどん腰を落とされてずぶずぶと加えこまされる。 「やああ、深い……」 「あ、気持ちい……。やばい、出そう」  共に身悶えながら、視線を合わせ、互いに唇を擦り合わせ激しく舌を舐め合う。気持ちが通じ合ったせいか、余計に感じてしまう。顔を離した虎鉄が千雪を見つめる眼差しが、いつも以上に甘く感じて、千雪も大胆に唇を寄せて舌先で虎鉄の引き締まった唇を乱すように舐め上げた。 「千雪……。動くぞ」 「うん」  しかしそんな二人を脅かすように、脱衣所へと繋がる扉がどんどんっと乱暴に叩かれた。 「誰か来たあ!」  千雪がお湯をばちゃつかせつつ、身を竦ませた瞬間に虎鉄をかなりきつく搾り上げたらしくて、虎鉄に耳元で艶めいたうめき声を漏らされた。それにまたぞくぞくっと感じてしまって千雪は虎鉄の熱い胸板に手を突っぱねて身を起こそうと暴れるのを、虎鉄が抱えて二人してもだついてしまった。 「おい! 虎鉄いるんだろ?」 (一臣兄ちゃん!!)  踏み込まれたら、流石にまずいと喚きそうになる千雪の口元を掌で覆い、虎鉄が眉根を顰めた色気ある表情でしーっとやる。 「まだ入ってる」 「こっち、外の鍵締めてなかったぞ? 不用心だな。8時半ぐらいにもう一回見回りきてやるからそれまでに出ておくんだぞ?」 「ありがとう」 「コーヒー牛乳置いといてやるから、千雪と仲良く飲むんだぞ」  相変わらず小学生の頃と同じような扱いをしてくる一臣に、急に名前を出されて千雪がまた慌てて串刺しにしてくる虎鉄自身から逃れようと足をばたつかせた。するとそれを許さず、虎鉄がサディスティックな仕草で両腰を掴んで押しとどめる。 「ひゃああん」  それがまたよいところを抉ってしまい、暴れた拍子に甘い嬌声を漏らしてしまった。 「おい、千雪」    流石に焦った虎鉄とのぼせたのか恥ずかしいからか分からないぐらいに茹で凧並に真っ赤になった千雪が顔を見合わせると、脱衣所から一臣の呆れたぼやき声が聞こえてきた。 「あー。ええとな。お前ら、あんまりやりすぎんなよ。あと、掃除も頼む」  ガタン、がちゃん。一臣が立ち去ったのを扉の音で確認してから、千雪は上目遣いに虎鉄を睨みつけながら、 肩をフルフルと震わせばしばし、虎鉄の胸を手で遠慮なく叩いた 「もう!! 虎鉄のバカ!!」 (兄ちゃんに知られた! 恥ずかしい、恥ずかしくて死ねる!!) 「痛っ! おい!」  兄が立ち去ったら叩かれた仕返しとばかり、湯船を揺らさんばかりの勢いでいきなり腰を下から打ち付けてきた虎鉄に、千雪はまた甘い声をたてながらしがみつくしかできなくなった。 「 っんん!! あんっ! もう、やめて! だめだめだめ」 「やめてじゃないだろ? もっとして、だろ?」 「なっ! 急に、図々しい!!」 (結構元からぐいぐい来てたけど……)と思いつつも、日に焼けた顔ににんまりと得意げな笑みを浮かべたままの、だらしない虎鉄の顔に絆されてしまう。 「いいだろ? お前が本当に、俺のものだって自覚してくれたんだから……。千雪の素直で可愛い姿。堪能させてくれよ? な?」 「……ううっ……。いいよ。でも掃除は虎鉄に任せたからね?」 「任せとけ」  ちゅっとまた自分から口づけて、千雪はまん丸大きな瞳を猫のように細めて蕩けた顔をして白いもっちりした腕を伸ばし虎鉄の首に絡みつけると、先が尖ったカッコいい耳元をちろり、と舐めながら甘く囁いた。 「このまま、俺のこと……。虎鉄の好きにしていいけどさ。そしたらもう、後は全部、俺のこと面倒見てね?」 「ああ。そんなのとっくの昔から、覚悟してるさ。俺はとっくに、お前の夫のつもりだからな?」  恋人になるつもりが夫を得てしまったらしい。プロポーズの言葉が大吉爺ちゃんと同じ「ともに白髪が生えるまで」だったのはちょっと腑に落ちないながらも、千雪は心身ともにほかほか幸せだった。 しかしその番虎鉄が元運動部のポテンシャルを如何なく発揮して本当に千雪を好きに味わってしまったため、その日は貧血からののぼせというコンボを決めた千雪は何度目かの気絶でそのまま朝まで幸せな眠りについてしまったのだった。            
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