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おばあちゃんがこの世から居なくなった
俺、田辺あきら(32歳)
仕事は不動産会社で働いている。
実家から離れて、もう8年くらい経つかな。
随分と時が経った。
いつしか1人暮らしにも慣れて寂しさも全く感じなくなったな。
久しぶりに実家に帰ると懐かしさもあるけど、戻りたいとも思わない。
だって俺、今の生活が自由で好きだしな。
ばあちゃん家には、実家から離れる前から、あまり行かなくなってた。
俺が小さい頃は共働きの両親の帰りが遅い時とか、よく預けられていたけどな。
ばあちゃんは、かなり厳しい人だった。
食事の際は正座しろとか肘ついたりした時には容赦なく叩かれたもんだ。
だけど、俺が寂しい顔してると何も言わずに抱きしめてくれた。
厳しさもあり優しさもあった。
そんな、ばあちゃんは1ヶ月前に死んだ。
最後は家で眠るように1人で亡くなっていたそうだ。
誰1人、ばあちゃんの死に目には会えなかった。
大人になって、随分と会わなくなって、それが普通になると、悲しいけど取り乱す程の悲しみはなかった。
お葬式も終わり、ばあちゃんの家は両親が少しずつ片付けていたみたいだけど、仕事もあって、ほとんど手付かずのまま残されていた。
そんな時に、ばあちゃんの遺言書は出てきた。
そして、俺が呼ばれた……
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