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ばあちゃんの寝室
居間にあるビデオテープのお陰で、かなりの時間が取られてしまった。
片付けなきゃいけないのに、思い出に浸り過ぎて、ビデオ観賞に没頭してしまった。
そのうちに、辺りは暗くなり夜遅くなった。
俺は居間のコタツで、いつの間にか朝まで眠ってしまっていた。
「あ~、寝ちゃったんだ、俺。早く他の部屋もやらなきゃな。」
俺は居間は後回しにして他の部屋を片付ける事にした。
ばあちゃんの寝室……
ばあちゃんの匂いがする……
ばあちゃんの寝室にも古いタンスや古い化粧台等があった。
その中のタンスの中に沢山のばあちゃんの日記があった。
俺は思わず、その中の一冊を手に取り中を見た。
そこには……
○年○月○日
今日もあきらは、まだピーマンを食べられない、どうしたものか。食べれるように工夫してみるか。
○年○月○日
今日、あきらは、友達の裕介くんと喧嘩したようだ。あきらが悪い、明日謝りなさい!と強めに叱ったから泣いてしまった。少し言い過ぎたかもしれない。
○年○月○日
今日、あきらは友達の裕介くんに謝って仲直りしたようだ。昨日は泣いてしまったけど、今日は元気で良かった。裕介くんと仲直り出来て良かった。
○年○月○日
今日は、あきらの嫌いなピーマンを細かく刻んでハンバーグに入れてみた。あきら騙されて食べていた。好き嫌い克服できて良かった。
「ばあちゃん……俺、あの時の事、覚えてるよ。ピーマン入りのハンバーグ食べて、めちゃくちゃピーマンの味して、めちゃくちゃ不味かったけど、ばあちゃん、凄い形相で俺の事ずっと見てたから、俺怖くて何も言えなかったんだよね……」
ばあちゃんが書いていた日記は俺の事ばかりで、俺の成長日記だった。
ばあちゃんの沢山の愛が俺の心の中へ染み込み、更に浸透して広がるのを感じた。
「ばあちゃん、こんなにも俺を愛してくれて、ありがとうな……」
俺の目には涙が滲んでいた……
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