5人が本棚に入れています
本棚に追加
買い取り業者
俺は思い出の品以外、お金になりそうな物は買い取り業者に買い取ってもらおうと、業者を呼んでいた。
コンコン。玄関から扉を叩く音。
「こんにちは。何でも買い取り○○です。」
「はい。こんにちは。宜しくお願い致します。」
「勿論です。高く買い取らせて頂きますよ。」
「ありがとうございます。早速、こちらです。どうぞ上がって下さい。」
「ありがとうございます。失礼致します。」
買い取り業者さんと、家の中を隅々まで回り、かなりの量の品々、家具等を買い取りしてもらった。
そして、家の中から沢山の物が買い取られ運び出された。
みるみる変わっていく、思い出のばあちゃんの家を見ていると何だか、とても寂しい気持ちに捕らわれた。
「この思い出のばあちゃん家、無くなっちゃうんだな……」
俺は無意識に小さく呟いていた。
そんな気持ちとは裏腹に作業は着々と進んでいた。
荷物の運びだしも終わり業者さんに買い取り金額を聞いた。
すると、驚く程の金額だった。
「えっ?こんなに貰えるんですか?!」
「はい、うちは高価買い取りしてますし、おばあ様の大切なお品ですから。何よりも、おばあ様の骨董品のセンスが良かったですよ。」
「えっ?骨董品だったんですか?ただの安い物かと思ってました!埃かぶって汚かったし。でも高く買い取ってもらって、ありがとうございます。」
「いえいえ、おばあ様のお陰です。こちらこそ、本日はお売り頂きまして、ありがとうございました。では後日お金は振り込みさせて頂きます。失礼致します。」
「ありがとうございました。また宜しくお願い致します。」
業者さんも帰り、まだ散らかっているが、明らかに前の思い出の家からは様変わりしたその景色に、とてつもなく俺の心は喪失感で満たされていた。
「ばあちゃん……ばあちゃんとの思い出が少しずつ無くなって行く……ばあちゃん、これでいいか?」
何とも表現し難い、その心の中のモヤモヤは、俺の中で掻き回す度に俺の目からは何粒も何粒も雫が溢れ落ちた。
ばあちゃんは、もう居ないんだな……
当たり前に居た筈なのに、もう2度と会えないなんて……
最初のコメントを投稿しよう!