芽生えの呪文

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 ……二年A組の天利(あまり)瞳子(とうこ)です。すみません、ちょっと緊張しちゃって。お水、飲ませてもらいますね。  ふう……新聞部部長の岳本(たけもと)さんから、不思議な体験を記事にしたいってお願いされて、それでこうしてみなさんの部室におじゃましているわけですけれど……あの体験については実のところ、わたしもよくわかっていない節があるのです。  いえ、当時よりは大人になりましたから、自分なりにはいろいろと考察してはいるんですけど、うまくお話できるかどうか。  一応、資料としてみなさんに『芽生えの呪文』についてのネット記事をお配りしましたが……みなさん、ご存知ですよね? 小学生の頃、流行ったでしょう? もしかしたら、この中にも試された方がいらっしゃるんじゃないかしら。  呪文を唱えれば願いが叶う──子どもなら誰しもが試してみたくなる。資料にあるように小学生の願いごとなんて、短冊に書く無邪気な願いごとばかりで、本当なら、その程度の願いは自分の努力でなんとかなるものです。ああ、もちろん。魔法使いになりたいとかっていうのは、努力でどうこうできるものではないですけど。  みなさんなら、どんなことを願うでしょうか?
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