芽生えの呪文

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 今はもう高校生ですから、恋愛のことや、お金がほしいといった、努力だけでは叶えるのが難しい願いかもしれませんね。  当時、わたしは四年生でした。10才というと女の子にとっては少し微妙なお年頃です。男の子よりは女の子のほうが精神的な発育が早いですから、真っ白な純粋さの中に、ほんの一滴……真っ黒な何かが混ざるだけで、もう二度ともとの白さを取り戻せなくなるような。そんな危うい時期。  わたしも例外ではありませんでした。  同じクラスに、Aさんという女生徒がいました。快活で意見をはっきり言うタイプの、リーダー的存在。でも、学級委員とかではないんです。人気者っていうわけでもなく……言い方が悪いかもしれませんが、口うるさいおばさんといえばわかりやすいでしょうか。ネット上にもよくいますよね、そういう人。  誰に頼まれたわけでもないのに、やたらと仕切りたがったり、正規のルールではない謎のマイルールを押し付けてくる人。暗黙の了解とかいってね。正義中毒なわけですよ、そういう人って。みなさん知ってます? 誰かを批判することによって快楽物質が脳から出るようになっているんですって。だから、正義中毒は厄介なんです。気持ちがいいんですもん。しかも、それが正義だと思えばなおさらでしょう?
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