芽生えの呪文

　Ａも、そういうタイプだったのです。

　掃除をさぼる男子に口うるさく注意する。運動会のリレーはクラスで一位を勝ち取ろう！　と、勝手に練習スケジュールを組んだり。とっても良い子ちゃんなわけです。先生からも気に入られてね。

　だけど、わたしはそんなＡが嫌いでした。

　一度、こんなことがありました。給食にプリンが出て、わたしはそれを最後に食べようと楽しみにしていました。すると、隣の席の男子が「食べないんならオレにくれよ」と言ってきたんです。やだなとは思いましたけど、そこで変に言い争うこともしたくなかったですし、その男子はちょっと空気の読めないタイプでもあったので、わたしは「いいよ」と、その子にプリンをあげようとしました。

　でもＡがすかさず「ダメよ！」って。

　Ａとその男子の言い合いになりました。Ａの言い分は、ひとり一個と決まっているんだからもらうのは良くない、もし本当に天利さんが食べないのであれば食べたい人たちで公平にジャンケンをすべきだというもので……対する男子は、天利がいいって言ってるんだからいいだろ、と。