芽生えの呪文

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 その日の夜、わたしは夢をみました。ねばねばとした黒い液体の中で、小さな虫が蠢いている夢です。その虫は爪の先ほどしかなくて、なにかの幼虫のようでした。うねうねと動き、管のようなものをだして、その黒い液体を吸いあげているのです。そうして少しづつ成長していく。だんだんと大きくなり、やがてそれは羽のある虫となって、その黒い壁を突き破って外へと出ていきました。  朝になり目が覚めるとお腹がちくちくと痛くて、やっぱり昨日、虫を飲み込んでしまったんじゃないかと、わたしは泣きそうになりました。でも、そんなことをお母さんに言えるわけもなく、わたしはその不快なちくちくに耐えながら学校に行きました。  Aはいつもと変わりがありませんでした。でも、Aがなにか喋るたび、その声を聞くたび、わたしのお腹はちくりちくりと痛み、なにかがお腹の中で動いているようにすら感じました。  痛くてどうしようもないというわけではないけれど、とにかく不快でした。
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