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「ホンマかいな。どれ、ケータイ貸してみいや」
和田君が手を伸ばしてミチオ君のズボンのポケットをまさぐると、
「あッ、いや~ん」
ミチオ君、間の抜けた声を出しちゃったんだ。
「なんやねん、変なとこ触ってへんで。お前、オトコオンナか」和田君は笑って言った。
すると阿部君が薄笑いして、
「いや、こいつはオトコオンナやで。昔からそうちゃうかなって思てたんやけど、やっぱりそや」
「どれ、いっぺん見てみよか」
「そや。こら篠山、ズボン脱げ」
「いや、嫌だよ」とミチオ君が後退りすると、ズボンのポケットから和田君の手に握られたケータイが顔を出した。
「あ、駄目」ミチオ君は取り返そうと和田君に飛びかかる。
そこに阿部君の強烈なパンチが。乾いた鈍い音が響いて、ミチオ君は大地に倒れた。
ずんッ。彼は殴られた頬を押えたまま動かない。
「大植、見てみようや」
「よっしゃ!」
大植君から下着ごと脱がされてもミチオ君は動かない。股間のものは縮みあがっているし、陰毛はまだ薄っすらとしか生えていないんだ。
「なんだよ、こいつ。まだガキじゃん」
「これじゃオトコオンナとか、そんな段階でもねえか」
阿部君たちは白けた顔で吐き捨てるように言った。
ところで和田君は丸出しの下半身を見たとたん、四歳下の弟の顔を思い出していたんだ。それから彼は自分のやっていることを恥じ、自分を嫌悪した。その裏返しなのか、彼は手にしていたミチオのケータイを睨み付けたあと、えいっと力を込めて、遠く古墳の丘に投げ捨てた。
「あ~あ。和田ちゃん、酷ぇことをしやったのー」
大植君が笑いながら言った。
阿部君はケータイでもっと虐めを続けたかったけれど、堀の奥に投げ捨ててしまったものはどうしようもない、今日のところはこのあたりにしておこうか、と思った。
「さ、行こうぜ」
四人は下半身丸出しのままじっと動かないミチオを無視して、広場から去っていった。
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