おかえり、魔法のクッキー

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× ×  ×  にゃ~♪ にゃにゃ~♪ にゃ~♪  陽気なハチネコおじさんの鼻歌が厨房で聞こえる。  僕はあの後、粉々になって世界中を飛び回った。皆が無くした記憶を思い出して、本当の場所に帰れるように。そして小さな欠片となってやっとここに戻って来たんだ。  最後に泣いてるハチネコおじさんの口にクリームをつけて、一欠片の僕を放り込んだ。だからね、厨房にはまた甘く優しい香り漂い、陽気な鼻歌が聞こえるようになったんだよ。  僕は小さく小さくなってしまったけど、カシャカシャ泡立て器を回しクリームをつけていく仕事ができた。小さくなっちゃったから大変だよ。だけど、みんなに元気をあげるために頑張らなくちゃ。  バンチュールは辺境の森で、氷の山の先で、灼熱の砂丘で、冒険者を探しては元気と笑顔をあげているらしい。今はまたどこかに行っているけど「冒険は帰って戻るまでが冒険だから」って言って皆んなを励ましているらしい。  だから僕はカシャカシャとクリームを作る。バンチュールがいつ帰って来てもいいように、「おかえり」って笑顔で言うために。僕は今日もクリームを作る。  カシャカシャカシャカシャ。
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