4

1/5

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

4

 東京での大学生活でも陽菜はいつも僕の隣にいた。  大学での時間割は、陽菜と一緒に決めた。陽菜が興味をもった一般教養を受けることもあった。  小さなワンルームの賃貸アパートでは契約上は僕一人が暮らしていることになっているが、陽菜も同じ部屋にいる。  陽菜のための服も何着か置かれている。 「新しい服ほしいなー。最近流行ってるコレとかほしい」  僕が買ってきたファッション誌を開きながら陽菜は言った。  自分で買い物をすることができない陽菜のため、僕は何度か女性向けブランドに足を運び、服を買ってきている。店員には「彼女へのプレゼントだ」と言えば、健気な彼氏だと親身になって話を聞いてくれた。  隣で「この色はヤダ」「いや、そんな細いの入らないし」などと陽菜は文句を言っていたけれど、なんだかんだで買ってあげれば陽菜の機嫌は途端に良くなった。  ただ、男の一人暮らしの部屋に女性向け服が多いという奇妙な光景を見せることができず、僕は大学生になってから誰一人として部屋に呼ぶことはできなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加