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「なんで、ここに……?」 「なんでって……澤村がLINEで連絡くれたんじゃない。『熱が出て動けない。頼むから薬と水を買ってきて』って。玄関のドア、鍵しめてなかったから入れたの」 「え……?」  大学は異なるが、榊もまた東京で一人暮らしをしている、それは知っていた。  しかし、僕は榊にそんなLINEを送った記憶などはなかった。  枕元にあったスマホを手に取り、履歴を見ると確かに榊へのLINEが送信されていた。  勝手に部屋に入り、勝手に僕のスマホを触り、勝手に榊へ連絡することができた、それは静物にならば触れることのできる陽菜にしかできないことだ。 「陽菜の名前、呼んでたね……」  物憂げな瞳を潤ませながら榊が言った。  女子が話しかけにくると、鬼の形相でその女子を睨んだり、殴ろうとする陽菜の姿はどこにも見えなかった。  もう一度、スマホを見るとトーク画面上に、記憶のない履歴を見つけた。それは僕と陽菜があの事故の日までやりとりをしていたものだった。  なぜかつい昨日、僕が陽菜へと何か送ったことになっているようだった。
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