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画面をタップすると僕が書いたことになっているメッセージが見えた。もちろん、こんなメッセージを書いた記憶はない。
間違いなくこれは陽菜から僕へのメッセージだ。
『勝手に真衣を呼んでごめんなさい。私じゃ薬を買うこともできないし、お水を飲ませることもできなかった。いざっていうときに佑のために何もできない、こんな彼女、佑の重荷にしかならない。やっぱり、こんな関係ダメなんだよ』
『佑のことは今でも大好き、私のために佑がいろんなことを考えてくれることは嬉しいけれど、私には佑を幸せにしてあげられない』
『大学生になって新しい生活を体験できている佑が本当に羨ましかったな』
『できれば一緒に東京で大学生になりたかったね。2人とも生きているカタチでね』
『佑と出会ったこと、佑に好きになってもらえたこと、佑に抱きしめてもらえたこと、死んでも忘れない』
『あ、もう死んでるか』
『死んでも私を大切にしてくれてありがとね。でも、これからは佑の日々を大切にしてください。私のことなんて引きずらず、幸せになってね』
『今まで本当にありがとう』
『大好きでした』
『バイバイ』
そんな長い文を読んだ後に部屋を見渡すと、どうやったのか陽菜のために買った服は消えてしまっていた。
スマホの写真フォルダを見ると、陽菜との写真がごっそりと消えてしまっていた。
なんでこんなことを、と画面をスクロールさせていると、たった一枚だけ写真が残っていることに気がついた。
それは、僕と陽菜がつきあってから最初に撮った二人の写真だった。
これが陽菜の最後のためらいだったのだろう。
最後に陽菜が残した感情を感じること、それはこの世界で、僕にしかできないことだろう。
歪んだ幻みたいな景色の中で、僕はもう一度、陽菜の名前を呼んだ。掠れた声は空気に消えた。
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