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*  七時四十五分に終わる講義の十分前に僕は塾を抜け出した。  駆け足で駅へと急ぎ、電車に乗った。  順調に行けば、花火開始の五分前には天文橋へと着くことができるはずだった。  しかし、電車はどこかで起きた事故か何かの都合で遅延していて、思った以上に時間がかかってしまった。  電車を降りた頃には、既に花火の上がる音が聞こえて、空気が震えていることもわかった。  駆け足で向かった花火会場は人がごった返していて、待ち合わせ場所である天文橋近くの噴水広場は頂点にあるシンボル以外は何も見えなくなるぐらい人で囲まれていた。  僕は陽菜を探すべく、噴水の周りを回った。どこかにあの大きな瞳で僕に怒る女の子がいるはずだと思いながら丁寧に回った。絶対に、絶対に見逃すはずはないと思いながら、きっかり五周回った。  しかし、どこにも陽菜の姿はなかった。  陽菜に電話をかけてみたが出てくれることはなく、僕が送ったLINEに既読がつくこともなかった。
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