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* 「陽菜……?」 「そうだよ?」  陽菜はいつものように笑顔を浮かべた。 「いつのまに来たんだよ?」 「いま」 「ウチの親には何も言わず?」  陽菜は頷いた。  もう夜の十時に近い時刻だ。  いくら何度かこの家に来たことがあるとはいえ、十代後半の女子が彼氏の家にやってくる時刻としては、あまりいい時刻ではないだろう。 「うん。こっそり、忍び足で。階段とかちょっと怖かった」  けらけらと笑う陽菜に僕は苦笑いをすることしかできなかった。  つきあってから一年近く経つけれど、僕は彼女のことをまだ理解できていないのかもしれない。 「で、なんでオレん家に?」 「なんでって――」  陽菜は大きくため息をついてから、僕の隣に座った。 「花火に行けなくて、悪かったなって思ったから。ごめんねって今日中に言いたくて」  予想もしなかった言葉を陽菜は言った。  花火に行けなくて?
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