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「陽菜……?」
「そうだよ?」
陽菜はいつものように笑顔を浮かべた。
「いつのまに来たんだよ?」
「いま」
「ウチの親には何も言わず?」
陽菜は頷いた。
もう夜の十時に近い時刻だ。
いくら何度かこの家に来たことがあるとはいえ、十代後半の女子が彼氏の家にやってくる時刻としては、あまりいい時刻ではないだろう。
「うん。こっそり、忍び足で。階段とかちょっと怖かった」
けらけらと笑う陽菜に僕は苦笑いをすることしかできなかった。
つきあってから一年近く経つけれど、僕は彼女のことをまだ理解できていないのかもしれない。
「で、なんでオレん家に?」
「なんでって――」
陽菜は大きくため息をついてから、僕の隣に座った。
「花火に行けなくて、悪かったなって思ったから。ごめんねって今日中に言いたくて」
予想もしなかった言葉を陽菜は言った。
花火に行けなくて?
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