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「どういう意味だ?」
「だからぁ……って、佑、怒ってる? 私が誘っておきながら来なかったって」
「……陽菜は、今日、あの噴水広場にこれなかったのか?」
僕の質問に陽菜は、こっくりと頷いた。
「そういうことか」
「ん?」
「いや、いいんだよ、陽菜。何も謝ることなんてない」
「え?」
「オレも遅刻しちゃったんだ。電車が遅延してて。探したけど陽菜がいなかったから帰っちゃったのかなぁって思ってたんだよ。オレが謝らなきゃって思ってた」
「マジで! 何それ! 私だけ謝り損じゃん!」
陽菜から謝罪なんてあったか? とは思ったけれどそこは黙っておくことにした。
「まぁ、お互い行けなかったならそれはそれでいいか。また今度、どこかの花火大会に行こうぜ」
「え、今度は佑が計画してくれるの? ヤバイ、嬉しい」
陽菜は膝から下の両足をバタバタとさせた。
「絶対だよ?」
「絶対だ」
そう言ったとき陽菜が僕に抱きつこうと両手を広げた。僕もそれを受け止めようと両手を広げたそのときだった。
「あんた何やってんの?」
その声を発したのはドアが開いたままの僕の部屋の前に立っていた姉だった。
彼女に抱きつこうとしているところを肉親に見られた、どう言い訳しよう、そんな混乱に陥っているとき、姉は更に僕を混乱に陥れることを言った。
「一人で手ぇ広げて何してんの? エア抱きつき? 気持ち悪っ!」
両方の二の腕をさすりながら姉は言った。
一人で?
僕は目の前にいる陽菜を見てから、もう一度、ドアの前に立つ姉を見た。
「陽菜ちゃんが見たら絶対、引くよ」
そう言い残すと姉は去っていった。
僕はもう一度、目の前にいる陽菜の顔を見た。
「うーん……、私、死んじゃったのかな?」
首を右に傾げて笑う陽菜に僕はまたも苦笑いを返すしかできなかった。
やっぱり僕は陽菜を理解できていないらしい。
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