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*  陽菜は駅に繋がる下り坂を自転車で下っていたところ、後ろからきた車に轢かれたらしい。スピードを出しすぎてカーブを曲がりきれなかったことが原因だった。  告別式に僕は制服を着て参加した。クラスメイトたちも来ていたがみんな僕を見ると気まずそうに目を逸らした。僕が陽菜とつきあっていることは周知の事実だった。  僕は式場に並べられたパイプ椅子に座った。何人かのクラスメイトが僕の隣に座ろうとしたが、 「ごめん、隣は空けておいてもらっていいかな」  と僕は断っていた。  そう言うと、クラスメイトたちは皆、無言でその席を空けてくれた。  皆がどう感じてくれたかはわからないが、僕は隣に陽菜を座らせたかっただけだった。  式場の祭壇には、花や果物かごが飾られた台があり、中央には重そうな棺、その上には笑っている陽菜の写真があった。 「ヤダな、あの写真。中学のときのやつじゃん。最近のを使ってほしかった」  隣に座る陽菜が眉間に皺を寄せながら言った。  どういうわけか着替えはできるらしく、陽菜も制服を着ていた。何度も触れたいと思っていた白いブラウスを今日は触れる気になれなかった。  焼香の際に僕が陽菜の両親にお辞儀をすると、彼女の母親が 「佑くん、来てくれてありがとうね。陽菜も喜ぶと思うわ」  と声をかけてくれた。  彼女の両親にも僕の隣にいる陽菜は見えないようだった。 「お母さん、ごめんね」  陽菜が何度も声をかけていたが、その声は両親に届くことはないようだった。  いつも前向きに明るい陽菜もさすがにつらいのか、目を真っ赤にして僕を見ながら「佑だけは私のこと見えるんだよね?」と言った。  僕は頷いた。 「ずっと一緒にいてくれるよね?」  僕は強く頷いた。
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