# 3 終わりを決める人は

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 ヤクザ相手に顔出しで啖呵を切れるような度胸は持ち合わせておらず、ひとまず昌也に迫っていた輩が立ち去ったことだけに安堵しながらロムはため息をついた。  もともとの遠慮があった上にトラブルもあって、事務所に入っていく勇気がすっかり損なわれてしまった。楽屋側の廊下に隠れるようにして脈が整うのを待つ。 「あーーー糞!!糞が!!うっせぇわバアカ!ライブの入りが悪いのは糞みたいな演奏するバンドのせいであって俺のブッキングは悪くねーんだっつうの!!!うるせぇのは金だけにしろってぇの!!」  バァン、と扉が開いて昌也が飛び込んで来たところに、ロムはバッチリと目が合ってしまった。 「あ。」 「……っす。」  隠れようがない。今来ました、も不自然だ。  とりあえず、当たり障りのない言葉を選ぶ。 「……ライブ、清算も清掃も終わったから、一応初日なんで言っとこうかなと。」  そう言うと、昌也は何故か驚いたような顔をして「あ?あーーー、あぁ。」と言葉を飲み込んだ。 「…………。」 「…………。」  何故か二人とも言葉が出ない。 「お前さぁ?」 「なんすか。」  何故か気まずそうに言葉を選んだ昌也に驚いて咄嗟に返事をする。しかし昌也はジロジロとロムの顔を見たまま、口をパクパクさせた後に話題を変えた。 「……AV見る?」 「何でだよ。」  思わず突っ込むロムにふっと笑うと、昌也は先程までの喧騒など何も気に留めることも無いかのように踵を返して「まぁちょっと、付き合えよ」と事務所に戻る扉を開けた。  
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