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「あの、コノハナという女。彼女がオズの子だとすれば、私が存在を知らないのも納得出来る。おそらくだが、ドーズが監獄に匿っていたんだと思う」
「……」
「詳しくはドーズを探して聞かねば。……聞いてるかねニルギリス」
やけに気安く声をかけてくる大嫌いな女。
いつもならば猫パンチのコンボ技を見舞っているところだが、今はそんなテンションではなく。
ただじとっとした目を向けるだけに留まった。
「なんだ、元気がないな。今日は猫パンチはしないのかね。猫じゃらしでも要るか?」
「何よ、何の用。さっさと用事を言ってちょうだい」
「そうか、では。『いつもの』を頼む」
「あら……もう切れたわけ?使いすぎじゃないの?」
いつもの、とはなにか。
薬だ。
ニルは腐っても医者であるから、薬を処方する資格も有している。
して、クレオの必要とする薬は何か。
……経口避妊薬だ。
クレオの『仕事』上、どうしても必要不可欠なもの。
「あぁ、いつも通りの仕様のものを頼むよ」
「不感症になるのは副作用よ、仕様じゃないわ」
「どちらにしても助かるよ。あんなことで快楽など感じたくなどないからな」
吐き捨てるクレオに、ニルは妙に苛つきを覚えた。
一瞬だけ目を細めたあと、ポケットから錠剤が入った瓶を取り出す。
「はいこれ」
「ありがとう。このことは他言無用でよろしく頼む」
「わかったわよ、もう早くどっか行って」
瓶をポケットにしまうクレオを、ニルは含みありげに眺めていた。
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