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「ハナちゃん」
背後から声をかけられ、振り向けば兄・ミフネ。
「……よぅ。『段取り』通りにいったかィ」
「おう。行こうか、時間じゃ」
ミフネがゆるく微笑みながらコノハナの横を通り過ぎ、路地裏の奥へ向かう。
吸っていた煙草の煙を思いきり吐き出し吸殻をポイ捨てしてから、その後を付いていった。
「案外上手くいったな」
「これからが本番じゃがの。この後の段取りは覚えとるか」
「あー……」
コノハナは確認すべく口に出していく。
段取りとやらを、聞いたとおりに。
「まずはあの……レッサーパンダちゃん?がこっちに寝返って、幽霊面のデカブツとムチムチ女をぶっ殺す」
「おう」
「神父の野郎と化物を、きょうだい達が始末する」
「じゃのう」
「あとは……なんだっけ」
「やれやれ、やっぱ忘れたんかい」
如何なる時も健忘症の妹に少々呆れたようで、息を吐いた。
「クレオを、潰すんじゃよ」
途端、ミフネの纏う空気が変わる。
いつもの穏やかな雰囲気はまるで無い。
皆の前で父親について吐露した時と同じく、憎悪と嫌悪に塗れていた。
「親父殿が言っとったじゃろ。首と胴体が泣き別れる原因になったのはあの女じゃと。あの女を潰して体を取り戻せば、親父殿は心を入れ替えると言っておった」
「ああー」
「あの女を失脚させて、市民の怒りを一身にぶつけさせれば流石に破滅する。そうすればきっと……」
「きっと、父さんもあたしらを見てくれるってか」
コノハナは馬鹿にした口ぶりで、完璧に水を差そうとする意志を感じられた。
興奮気味に早口でべらべら喋っていたミフネだったが、ぴたりと口を噤む。
「考えてもみろよぅ。あの優しいことしか言わない生首が、事実だけを言ってると思うか?自分がこさえたくせに放置し続けたガキどもを、今更見るとでも?女ひとり潰した代わりに?」
「……どういう意味かね?」
「生首の方は信じちゃならねェってんだ。分からねェ兄貴だな」
歩みを進めていたミフネが立ち止まった。
同じくコノハナも立ち止まって、しかし口だけは動かすのを止めない。
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