自分勝手な彼ら

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ーーー 地下監獄の狭い房にて、遠山静句とその甥は今頃起きているはずの事態を想っていた。 数々の裏切りが招く、黒幕……オズの思うつぼの未来を。 あらゆる者たちの悲嘆に暮れる声が、耳をすませば聞こえてきそうだ。 「静句おばちゃん……みんな、大丈夫かな……」 「ダメでしょうねー。このままだとみんなくたばりますです」 ふたりは全てを知っていた。 知っていてなお、オズに加担したのだ。彼に、たった一つの恩を売られたから。 が、今となってはそれがまるっきり間違いだったように思う。 「……」 遠山鎮巳は考える。 じっと、ずっと、考えている。自分が、一体何故今ここに居るのかを。 そもそも自分の目的は、父を……どうしたいのだったか。 殺害しようとも思ったが、それも本当のところどうなのか。 父親が憎い。それは間違いない。 だがそれは全て、自分たちの家庭の問題である。 父親ごと国ひとつ潰すのは、筋違いもいい所ではないか? 「……」 決まっている。間違いだ。 自分は、人生の重要な選択肢を間違えたのだ。 もうこの間違いは正せないかもしれないけれど、それでもなにかをすべきだと思う。 たとえばそう……『オズの企みを、止めること』なんかを。 「……一抜け」 「え?」 「やめた……国、潰すの。オズさんの言うこと聞くのも」 静句は目を見張る。 甥が、鎮巳が、自分の意志を喋るのは非常に珍しいことだ。 大きく強い体を誇ることも無く、常に静句の後ろに隠れている。 鎮巳は昔からそういう子だから。 「やめるのですー?」 「うん」 「どーして」 「…………、……八つ当たり、ダメ絶対……だから」 とんでもなく口下手ながら、自分なりの持論を述べる鎮巳。 静句はといえば、鎮巳の言う「八つ当たり」に少なからず感化された様子だ。 「八つ当たり……ですかー。たしかにそうなのです。わたくし達は皆、自分勝手が過ぎる。そろそろ反省する時間なのです」 「うん……反省しよう」 「兄ちゃんも化物もぶっ殺したいのは山々ですがー。それは後で良いのです」 「うん……」 「よし!みーくん、皆さんを止めに行きますですよ。メガトンパンチをお見舞いしたりましょー」 「無理……」
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