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「身を清め、、、てって。 あ、、、ああでもそうですよね、そこはちゃんとしなくちゃですよね」 何となくの違和感は拭えないけど、ここまで来たら言う通りにするしかない。 「しかし困りましたね、正装の用意もないのでは、、、。 いや待てよ、、、ああそうだ、ちょうど新品のバスローブが二組ありますから、今回はそれでいきましょう。 洗面所に置いておきますので、隅々まで綺麗にしたら下には何も着けず、バスローブだけ羽織って来て下さい。 坊っちゃんが出たら次、僕も入りますから」 丹治さんは自分も上着を脱いでソファの端に放った。 「い、、、 いや、いくら何でもバスローブってのはどうかと、、、」 極道にとっては神聖な儀式だろ? それなのにバスローブって。 「警察幹部と交渉するなら組の名、つまり『柳洞会』の名前を使って(かしら)にも動いてもらわなければなりません。 その為には何よりも先に組の役員である僕と坊っちゃんの間で契りの儀式を済ませて置くことが大事なんです。 服装だとか使う器がどうのとか悠長なことを言っていたら結城さんが、、」 「わかりました、わかりましたっ まっ待ってて下さいっ、俺すぐに風呂行って隅々までピッカピカに清めてきますからっ」 「あと洗面台にお口専用の清浄剤があります。オーラルケアも忘れずに」 何故か丹治さんは堪える笑いを隠すように背を向けた。 「は、はいっっ、、、?」 思えばここまでの段階で丹治さんの妙な震え笑いを見ている俺は、 ─ 本当にこれでいいんだろうか? と首をひねりながらも再度促され、教えられた浴室へ向かった。
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