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丹治さんはスマホを手にし、どこかへ電話をかけ始めた。
「── お世話になります。
柳洞組若頭、響屋 丹治と申しますが、捜査一課の水無月さんに繋いで頂けますか。
、、、用件?
ああ、では結構です。
代わりに『今から送る画像を見て頂きたい』とだけ、お伝え下さい」
言って通話を切ると、室内用としては眩しいほどのライトを点け、テーブルの上にあるPCを立ち上げた。
そしてカウチに戻るなり横たわる俺の髪を掴んで引き起こし耳元で囁いた。
「試練、堪えて頂きます」
「ぃだ、、、痛ぃ」
すぐさま聞き慣れた、
けど異様な怒りを含む水無月さんの、
『響屋てめぇっ』という声が耳に飛び込んでくる。
『これは一体どういうことだ、何を企んでるっ』
目の前の画面にはデスクに両手を着く水無月さんの顔があった。
「みなつきさ、、、ぁぅっ」
髪を掴む手は容赦なく画面の水無月さんに向かって突き出され、身体が揺れるに伴い、腕の鎖はジャラジャラと音を立てた。
「困りましたねぇ、水無月さん、
柳洞組の大事なパイプ役を隠されては。
結城さんを使わせて頂くことは組対(組織犯罪対策部)と合意の上だったはず。
『どういうこと』とは、こちらの台詞ですよ」
真っ裸な俺はせいぜい股を閉じてされるに任せるだけ。
どのみち抵抗する力も出なくなってるし、喉全体がだるくて唇の締まりも悪いしで、声を出したところで呂律に関しては酔っぱらいどこじゃない。
『結城の所在と進退については今上層部に掛け合ってるところだ。
そのガキは結城や俺達と何の関わりもない、今すぐ解放してやっ、、、
おい、お前まさか汰士にヤク入れたりしてないだろうなっ』
水無月さんが血相を変えると、丹治さんは感心したような声を上げた。
「ほぅ。
画面越しでもわかりましたか。
入れたと言っても今はまだ極々微量なんですが。
しかしご安心下さい、彼の気分は悪くないはずですよ、ただ、、、。
彼の方はわかりませんが」
パソコンに向かって話しただけなのに、その瞬間画面が二分割し、片側に俺と同じく手枷をされた男の姿が現れた。
あれは、、、
「ク、、、クマ、さ」
『森山田っ!』
俺よりも早く水無月さんが叫んだ。
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