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No Name
「やられたな」
通信が切断された後、水無月は腕を組んで天井を見上げた。
「全くだ、、、。
一体何故こんなことになった。
性暴力を受けている害者が殺されるようなことがあったら、私は総監に何と言い訳すればいいんだ」
「結城はどうなっても?」
水無月に問われ、頭を抱えた警視監は茶を運んできた鴨川にふと顔を向けた。
「君、結城は今後SITでは使いモノにならんと思うかね?」
「え? ええ、、、恐らくは。
SITはもとより射撃手からも降ろさなければならないかと。
利き手の腱を傷つけた可能性もありますし、何より引き金を操る指を落としたのは致命的ですから。
響屋の言う通り、組にとっては結城さんが『便利より脅威の存在』となってしまってたんですかね、『危険因子』とも言ってましたし」
鴨川の返答を聞き、水無月は笑った。
普段からほとんど表情という表情を出さない水無月の笑いに、当の鴨川は勿論のこと、その場にいた一同も驚いた。
「どうしました、水無月さん?」
「響屋の茶番に乗っけられたんだよ、俺たちは」
「茶番?」
「考えてもみろ。
森山田は正義感から結城と中野の関係をタレ込んだ。
が、それによる柳洞組の損失など大したことはない。
まあ、確かに結城が処分され、使えなくなれば組にとって都合の良いツールが一つ欠けるわけだが、所詮その程度。
奴らほどの組織が漏れて困るほどの情報を結城に与え、わざわざ危険因子にさせるとは思えない。
てことはだ、森山田を監禁し暴行する理由もなかったはず」
「じゃあどういうことですか?」
「柳洞組若頭の響屋丹治が結城に責任を取らせることなく、刑事部からうまく切り離したってことだよ。
結城がどこまで承知していたかは分からないけどな」
「SITの命とも言える指を落としてまで? それはさすがに、、、」
「いや、そこまでは想定してなかったにしても、あいつの頭ん中は汰士で埋まってる。
指や腕どころか命すら惜しまないくらいにな。
響屋はそれをわかっていたんだ」
警視監は怪訝な顔をし、鴨川は首を捻った。
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