No Name

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「駄目って言ったのにっ。 俺は結城さんのこと思って言ってんだからっ」 そんな俺の殊勝な気持ちが伝わるわけない。 だって相手は結城さんだから。 ほらね、 今も潤んだ視界の中で目を留めると、腕に蛇を巻き付けた男は完勃ちの先から溢れるものを筋立った全体に塗りつけ、俺を見ながら ゆるゆると(しご)いている。 「黙って尻出せ。 今から死ぬほどヨがらせてやるから」 その低い声を聞けば、この状態で止めるとは思えない。 けど、結城さんの人差し指は少し浮いていて、完全に曲げられてはいないことがわかる。 これまでの経験からして、結城さんが拒否れば拒否るほど興奮するタイプってことを学んでいる俺は、恥ずかしさを偲んで提案することにした。 「待って、待って。 ほ、本格的にヤるってなるとさ、多少なりとも手に負荷かかるだろ? だから、ね? しばらくは俺が口でするよ、 ゆ、結城さんがしてくれたみたいに」 半身を起こす俺を再びそっと押し倒し、 「ヘタクソ(・・・・)なフェラで俺の股を煽んな(・・・)。 そっちのが取り返しつかなくなるだろが」 何か言い返してきたけど、意味は不明。 「へっ、、、ヘタ? ヘタが煽るかよっ。 第一、下手じゃないしっ」 「したこともねぇのに大口叩くな」 「あるよっ 丹治さんとはっ、、、ぁっ」 「、、、」 「、、、」 「ん、、、だと?」 ま、、、 まずい。 「ぇ、、、っと、違う違う。 あれは芝居って言うか、演技って言うか、、、」 「芝居で、、、ってか。 ほーん、、、 演技でねぇ、『丹治』のをなぁ」 結城さん、凄い目。 「ぃゃ、、、」 こっ、怖ぇぇ。 ヤクザの丹治さんと同じくらい、いやそれよりヤバい。 「てことは? この口はもう男知ってんだ?」 親指でムニッと口の端を伸ばされる。 「そ、そうらんらけろっ。 らけろ仕方なかっらんらよっ」 手を退かし、 「俺達は結城さんを助ける為に、、、っ」 「『俺達』?」 そこもこだわるかよっ だけど、 「いっ、、、嫌だよね、そりゃぁ嫌だよね? 俺だって結城さんが他の誰かと同じこと したら嫌だもん。 だからもう二度とあんなことは」 「、、、れぇ」 「え、な、なに」 「辛ぇからもう言うな」 「は、、、はぃ」 苦しそうな顔。 どうしよう、、、俺、 結城さんを傷つけちゃったんだ ──。 「で? 丹治とどこまでヤった」 「あ、、、いや。 辛いんなら訊かない方が、、、」  「はぁっ?  訊くにきまってんだろ、ちゃんと答えろ」 急に鬼顔復帰で何なんだ、この人は。 「今の今言うなって言ったじゃんかよ、、、あぅっっ」 その瞬間、ずんっと尻と腹に衝撃が走り、俺は結城さんに貫かれた。
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