再会

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─── 「柏木CEO、急ぎませんと本社との打ち合わせが」 未練がましくいつまでも青年を目で追う柏木に、同行していた秘書の一人が痺れを切らし声を掛けた。 「ああ。、、、わかっている」 横に並び、 「お知り合いでしたか?」 逃げるように去って行った青年の訝しげな表情からはとてもそうは見えなかったが、先を促す意図も踏まえ早口で訊いた。 「もう、、、何年も前になるかな。 水族館で『連れとの写真を撮って欲しい』と彼に頼まれたんだ。 それだけ、たった一度のことなんだが、、、」 過去、上の空で話す柏木など見たこともなかった秘書は、それを聞いて更に驚いた。 「そう、、、ですか。 でしたら余程印象的だったんですね。 彼の顔を今でも覚えていらっしゃったとは、、、」 ふと、 我に返った柏木は腕の時計を見て言った。 「君は先に行っててくれないか。 本社には私が急用で少し遅れると伝えておいて欲しい」 「どちらへ?」 「駅向こうのレックスビルだ。 そこに入っているクッキングサロンに申し込みをしてくる」 言っている間にも大股で立ち去る柏木の背中を、今度は秘書が呆けたように口を開けて見送った。 「CEOが、、、クッキング?」
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