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けど、
今日から始まるここでの副業は、そんな生易しいものではなさそうだ。
何しろこの『昭和感満載』な指示書の一番目を飾る業務には、
『ちゃぶ台と座布団を買ってこい』
に続いて、
『俺が帰るまでに戻って飯と風呂の準備をしておけ』
なんて、いきなり無理ゲーな文字の羅列に上から目線な物言い。
いくら雇用主だからって。
「なーんか偉そうなんだよな〜。
えーと、なになに。
『おかずは毎回、、、三品以上、
ビールは切らすな。
必ず瓶で用意しろ。
出す直前まで唸るほど冷やしておけ』、、、って、これ」
どこかで聞いたことのあるようなセリフに俺は首をひねる。
「あ」
思い出した。
死んだばぁちゃんが亭主関白だった爺ちゃんに言われてたことと同じだ。
「おふくろや俺にはそうでもなかったけど、ばぁちゃんだけには爺ちゃん、やれビールがぬるいとか、やれ風呂は熱くしとけとか、いっつも威張ってたもんなぁ」
俺はもう一度メモに目を落とし、ため息をついた。
「結城さんて、、、見た目は今どきなのに中身は時代錯誤のヘンクツ男だったりして。、、、だいたいさ」
ちゃぶ台と座布団て、
「昭和かよ」
指示書には結城さんが帰るまでに戻れとある。
この令和に『ちゃぶ台』なんて売ってるとこあるのかもわからないけど、
とにかく俺は、
『リサイクルショップにでも行くか』
と、右も左もわからない下町の散策を兼ねて出掛けることにした。
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