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そう。
これだよ、これ。
指示書にしたって今は手書きで寄越すより電子化した方がよっぽど便利で確実なんだから。
救世主桝谷さん登場のおかげで俺は骨董屋で無事ちゃぶ台を買い、一旦部屋に運び入れた後 教えてもらった格安スーパーで調味料、商店街では惣菜を買うことができた。
決して裕福ではない共働きの家庭に育ったから料理以外の家事なら普通にこなせる。
だからこの降って湧いた副業に関しても料理さえ覚えれば仕事自体は何とか上手くやれそうだと思っていた。
ただ、結城さんから渡された部屋の鍵と二人分に当たる今月の生活費。
この生活費の額が問題だった。
『身の丈に合った買い物しろ』とか
『貧乏所帯だからって嘆くなよ、出世するまでは薄給だからな』
とか、まるで昭和の親父みたいなこと言って寄越してきたのは、びっくりするほどの大金で、だから当然、
『これって、多分、、、
俺の報酬込みなんですよね?』
とビビリながら受け取ったら、結城さんは一瞬固まった後、鼻で笑った。
『まさか。
お前の報酬引いたら五十万も残らない。それじゃさすがに生活できないだろ』
と。
いや、この人、ケタ間違えてないか?
俺は本気でそう疑った。
だけど無理やり持たされたのは厚々とした札束で。
自分の常識は他人の非常識って言うけど、、、
手に入れたちゃぶ台を説明された通りに組み立てながら思わず俺は独り言ちた。
「『身の丈』とか『貧乏所帯』って
言葉は遣うのに、肝心の金銭感覚は
ハイパーインフレって、どういうことだよ」
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