169人が本棚に入れています
本棚に追加
『適当かよ』って気抜けが怖さを抑え、情けない体勢で怖がってる自分に男のプライドが首をもたげた。
俺は何とか自身の気を奮い立たせると一度頭を振り、流れる水滴を放った後 閃光を待って目を閉じた。
ピカッ
「、、、さん、、に、いち」
天からの応援か、はたまた偶然か、
バリバリッ、ドドーンッ、、、
「ぉわっ」
怖くないと言えば嘘だけど、それよりも、
「あ、、、あ、当たった!
聞いた? 結城さんっ、当たった!」
タイミングぴったりの轟音にテンション爆上がりで興奮した俺は身をよじり、結城さんの腕から無理やり降りた。
欄干から身を乗り出したくて鉄の部分に肘を乗せようとするも、
「感電するからやめとけ」
背後から回された腕に引き戻され、仕方なく硬い胸に背を預けて目を凝らす。
「何となく間隔を掴めたら、次は光るタイミングも当てられそうだろ?」
「うん」
「そろそろだな」
結城さんの胸がすぅっと俺の背中に密着したタイミングでカウントを取った。
雨の勢いが少しだけ弱まり、二人の声が重なるのがわかる。
「さん、に、いち」
ピカッッ、、、
「ひ、、、光った!」
「次、音」
真近だった雷が雨と共に離れてると感じた俺は、目を閉じて さっきの間隔より少し遅めにカウントを取る。
「、、、さん、に、いち」
ドドーン、、、
「やった、ゆうきさ、、、」
雨に濡れ、
熱が奪われた身体の芯を、届く雷鳴が震わせる。
雨と同じくらい冷たく重なったそれが結城さんの唇だとわかったのは、雨よりも優しく俺の口に触れたから。
後になって何度か、その時結城さんにキスされるに任せた理由を考えてみたけれど、
─ 何故か身体が拒まなかった ─
っていう答えしか見いだすことができなかった。
最初のコメントを投稿しよう!