孤独の認識

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カナダ出発から8日、作戦本部のあるシリコンバレーへ到着した。そこには変わり果てた姿の都市があった。雪に包まれた都市は、どこか現実味を帯びていないように感じられた。 荒廃した都市をスノーモービルで雪をかき分けながら進んでいく。しばらくすると、見慣れた形のビルを見つけた。作戦本部のあるUNIFS(ユニフス)だ。かつて、ここには地球の燃料危機を解決すべく集まった先鋭達が集っていた。ビルに入り、地下への階段を下りていく。扉にあるIDカードの読み取り機はすでに機能していないようであった。力ずくで扉を開ける。 扉を開けた先には、見慣れた会議室があった。ここは当時のままである。地下にあったおかげか、積雪などの被害は受けていないようであった。 僕は慣れた手つきで半透明のPDA(情報端末)を調べていく。そこには、僕が出発する以前からの議事録などが一覧で記録されていた。 PDAのロック画面を見て、驚愕した。表示されている日時の西暦が3390年になっていたのだ。地球を出発したのが2586年、そこから4年半の旅路であったはずであるのに何故……。 焦りながら、他のPDAの日時も確認する。十数台ものPDAを調べたが、全て3390年と表示されている。 宇宙では、ワームホールという時空の裂け目が強い重力によって発生することがあるという。僕が任務に出ている4年半の間、地球では800年もの年月が過ぎてしまっていたというのか。過ぎ去った時間に困惑しながら、PDAを操作して、800年もの間にあった歴史を読み解こうとする。
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