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今日初めてやってきたカップルは、比較的若い二人だ。彼らもまた、秋月ご指名でやってきた。
年上で落ち着いた、仕事の出来そうな女性と、年下で甘え上手そうな男性。こんな二人に限って夜の主導権は逆だったりするんだよな、なんて下世話なことを考えながらおくびにも出さず、いつものように輝く笑顔で対応にあたる秋月であった。
式の日程、予算、ドレスの希望、ゲストの人数、料理の種類、ケーキのイメージ、BGM……。要望や理想をヒアリングして、それを形にできるプランを提案する。
やはり終始女性が主に意見を出し、男性は横で頷いている、という感じだった。結婚式というイベント自体、女性がメインで取り組むことが多いのは確かだが、この二人は特にその傾向が強かった。すでに嫁の尻に敷かれているような、そんな印象を受けた。
打ち合わせが終了した。初回の打ち合わせは実に三時間に渡った。もちろん今日だけで終わるわけではなく、今後何度も来店してもらって、式の当日から逆算して、何をいつまでに準備すればよいか綿密な計画を立て、着実に実行していくのだ。訪れるカップルはたいてい、式を挙げるのは初めてであるから、慣れない彼らをサポートしながら、秋月は持てる限りの知識と情報を総動員して、結婚式のスペシャリストとして誠心誠意プロデュースする。
今日の二人も、連日訪れる多くのカップルの一組に過ぎない、初日はそう思っていた。
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