渡せない。

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渡せない。

『心配かけてすみませんでした。』 僕は、共有スペースで皆の安心した顔を見ていた。 「良かった。心配したんだぞ。」 海さんが言った。 『はい。ありがとうございます。』 僕は、納得のいかない顔をしている彼女を見る。 何が納得しないかはわかっている。 「小雨、どういうこと。」 『何の事?』 「なんでも、ない。」 …顔をそらされた。 あーーー。やってしまった。 僕が一番最初に思ったことだった。 彼女が何に疑問を持ち、僕に聞きたい事も。 双子の姉の事だろう。 彼女の目から見ると突然消えたことになるから。 僕が知っていることを話しても納得は出来ないだろう。…それに、姉が望むまでは。
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