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君を思う。
「今晩は、社長。」
紺色のワンピースでコートを軽く羽織っている小雨が笑った。
「あぁ、急に変えてすまなかったね。どんな感じかな。」
隣に座った小雨にそう言った。
「…さぁ、彼ら次第じゃないですか。
…バーテンダーさん、ライラをください。」
「わかりました。」
「ライラ、美味しいかい?」
「美味しいですよ。
それに隠れた言葉が素敵じゃないですか。」
小雨がクスッと笑った。
「ライラです。」
「ありがとうございます。」
バーテンダからライラを受け取ると一口飲んだ。
「隠された言葉ねぇ。
皆にはお酒が強いことは言ってないのかい?」
確か、酒豪だったなと思って言った。
「言ってないですね。本当は皆さんと飲みたいですけど。
でも、今は無理ですね。昔なら出来たはずなのに。」
悲しそうに笑ってからライラをもう一口飲んで小雨が言う。
「…優雨の事、聞きましたか。」
えらく寂しそうな顔をするじゃないか。
「勿論、でも彼女はその道を選んだんだろう。
それを否定する必要はないからね。」
「そう…なんでしょうけど…一度くらいは僕の歌を歌って欲しかったとは思ってしまいますね。
…ごちそうさまでした。お先に失礼します。」
カランと扉が閉まった。
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