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信用できない。
コンコン
レッスン室の扉が叩かれる音がした。
「今、ちょっといいかな?」
楓さんの声だった。
「はい、なんでしょうか」
私は、汗をぬぐった。
「優雨の事、少しわかったんだけどね。
あれ以来、仕事もしてないらしい。」
しばらく沈黙が続いてから私はうつむいて言った。
「仕事していないならどうやって生きているんですか?」
「わからない。だけど、優雨は生きている。」
だから…なんですか?
生きているから良いとかって言うつもりですか?
私は、壁に寄りかかって楓さんをじっと見た。
まだ、言葉が続くんじゃないかと思ったから。
でも、もうないらしくてそれだけを言いに来たらしい。
…そんなの今までと進んでないのと同じだ。
彼ら…優雨の家族はどうせそこまでの愛なのだ。
私たちの帰ってきて欲しいという願いよりも薄い愛なのだから
「信用できない。」
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