怖い

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 彼は登校したがまだ一年生で教室も一階にあった。教室には朝早いのにすでに同級生たちが集まっていて少し驚いた。「今日の授業は体育だな」と運動神経というものらしいがそれのいい小畑は言った。運動神経って何だっけと彼は思った。 「小畑は野球がうまいからな」と同級生の戸城は言って野球のバットを振るしぐさをした。 「うまいよな」 「松尾はどうだ」 「オレ苦手だ」と彼は答えた。松尾はそれより気になる児童の女のことを考えていたが忘れた。  チャイムはなって授業ははじまった。国語の授業だった。五十一文字を書いた。書いていたら急に実代のことが気になって振り返った。でも彼女は彼を気にしていないようだった。彼にとってそれはまだ経験したことはなかった新しいことだった。これは何だろうか。これはいつかお父さんが言っていたことかな、と思い出した。これが恋というものなのか? 彼の心に恋心が芽生えた。  公立小学校の校舎は日を浴びていた。校庭には鉄棒があってサッカーのゴール二つとバスケットボールのゴールが二つあった。どちらも彼はそのうち使ってみようかなとは思っていた。でも今彼は実代のことが気になっていた。これは何か芽が出たというのかな、本に載っていた、と彼は思っていた。
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