ビッグドールハウスの君

【第2話】絵画購入は慎重に

どれもピンとこないのだ。

いや、厳密には万引きする立場だったら欲しいと思う物はいくつかあった。でも、値段を見るとどうもコストパフォーマンスが低いと感じて萎えてしまう。

一見良さそうに見えても、心が惹かれない。美術館で感じるあの感動をこの全国展開するチェーンの雑貨屋に求めているのではない。ただ自分が自立して新居にも持っていきたくなるほどの愛着が持てるような絵画が欲しいのだ。

ずっと同じコーナーで立ち止まっているからか、他にもこのコーナーをじっくり見たい客が迷惑そうな視線を次々と集中攻撃してくるものだから、そそくさとレジへ向かい会計を済ませ駅ビルからもおさらばした。

絵は買えなかった訳だが、本音を言えば絵の購入は今回の買い物の目玉だった。1店舗のみで挫けてしまう程の精神力を持ち合わせていなかった為、売り物の値段はちょっぴり上がってしまうけれど、古着店やこだわりを持つ個人経営のカフェが集う通りに足を向けた。