プロトコル・オブ・スペクトル

Protocol of Spectral

　特派員としての過酷な任務に耐え抜く為、バッタの改造手術が行われた。後に都市伝説として語られる過去で、このエピソードをヒントに創作されたのが「仮面ライダー」らしい。
　あのヒーローの様に外見上の派手な改造は皆無で、新陳代謝の超強化で常にフレッシュな肉体を保つ永遠の若さが与えられた。けれど生殖が彼の特異性を子孫に遺伝させる懸念を防ぐ為に、男性しか愛せない嗜好と志向と思考を植え付けた。
　やがて彼のクローンが大量生産され、そのどれもの脳に現バッタの意識と英知がインストールされた筋肉軍団がイナゴの大群のように過去へ跳んだ。

　前人未到の任務に旅立ったバッタとの別れを名残り惜しんだ誰かが、彼のスタンディングデスクに摘んだダンデライオンを一輪置いた。

　分裂バッタは蜂や蟻のように個体で同じ認識を共有して行動可能なヒューマン・ブレイン・ネットワークを過去世界に展開した。人間の祖となる原始の民に混ざって暗躍した。
　人類に火を教えたのもバッタだった。後に彼は「プロメテウス」のモデルになった。