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C2迷彩シーツを脇に挟み、全裸で寛ぐバッタの肉体美をずっと見つめる美青年は言った。
「貴方を彫刻したい」
その青年とバッタの蜜月の日々の賜物がローマのカラカラ浴場遺跡の「ヘラクレス像」だった。
厚い胸板に抱かれたリュシッポスの愛が刻まれた彫像からは旅立つ前のバッタの軽佻浮薄な面影が消えた重厚な成長が伺えた。
現代に残ってサポートしているプロジェクトチームのプログラマーたちの間では美術品の中から「バッタをさがせ!」がブームになった。ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」の手前の死体やピカソの「ゲルニカ」はウォーリーのアレよりも簡単だったが、まさかムンクの「叫び」は作者自身ではなくバッタの変顔だったなんて難易度高いものもあった。
「お前ら面白いことやってんなあ、僕も混ぜてくれよ」
突然そう叫びながら研究所のラウンジに乱入して来たのは、筋組織の鎧を纏った肉達磨だった。
「おいおいお前ら、相変わらずだなあ。けどよ、勝負の引き際を弁えないと、好奇心が猫を殺すんだぜ 」
筋肉達磨は言った。
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