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オリュンポス十二神は言わずもがな、仏陀もジーザスも実在していなかった。それらは人々の叡智が交合した神々しい概念だった。宗教は天上天下唯我独尊の言葉と共に誕生したものでも茨を冠した救世主が布教したものでもなく、聖餐と凄惨の清算の果てに生産された人類運営マニュアルだった。
我々調査隊が未来から訪れ観賞したように、更に進化した先の未来人が時代に干渉した痕跡が数多く見つかった。それらを元に推測されるのは過去の人類が未来人の強制的矯正を拒んで押し付けられた教義を自分たちの理想形に作り替えた事だ。その度に未来人は火種を起こし、同じ祖を持つ宗教を解釈の違いで対立させ弱者を駆逐させ文明を衰退させた。
人類はフィルムでの記録手段を手に入れてから大戦以降の原爆投下やテロリズムや紛争での虐殺の瞬間等を詳細な情報として残している。けれど書物や絵画だけで語られてきた揮発した歴史には誇張と隠蔽のエントロピー操作が為されている。その理由はありのままの歴史の開示は架空の神を殺すからだ。人類は宗教に護られながら宗教を守って共存して生きてきた。
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