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「おっ、来たな。最後の一人!」
集合場所に着くと、案の定ずらっと人が揃っていた。視線が痛い。が、特に追及されることなく、あっさりとミーティングが始められた。
「えー、新入局員7名を迎え、新年度が始まった。今年度も、凶悪事件は幾つも起こるだろう。それらを解決していくのが、我々の使命だ。各自、気を引き締めていくように。」
「「はい!」」
古市は、課長の話を聞きながら周りをゆっくりと見渡す。思っていたより人が多い。そんな中、新入局員たちの中に見知った顔を見つけた。
(ゲッ、坂本じゃん…!)
坂本霧雨――訓練校時代、古市と同室だった青年である。ストレートの長い黒髪と太めの眉毛が特徴的なバカだ。古市が静かにしたい時も、散々絡まれてうざったかったのを覚えている。
「――では、早速班に分かれて懇親会というか…まあそんな感じだ。とにかくこの表を見て分かれてくれ。」
「あの、班って…?」
「あー…うちは一件一件に時間がかかりがちだからさ、5つの班に分かれて捜査を行うんだ。かつての警察とはまた仕組みが違うんだ。」
「へえ…」
一課には、α、β、γ、δ、εの5つの班がある。表を見たところ、古市はγ班らしい。古市はγ班と記されたスペースへと移動する。すると、先程案内してくれた安藤の姿があった。
「あ!さっきの…」
「安藤よ。安藤千景。アナタたちの教育係よ。宜しくね。」
「あ、宜しくおね…って“たち”って何ですか!?」
「表見たでしょ?もう一人いるのよ。ね、坂本くん。」
「お、古市じゃん。」
「わーっ、坂本!?」
まさか、コイツと同じ班だとは。古市は驚愕した。厄介になりそうだ。
「あら、二人共知り合いなの?」
「知り合いも何も、僕たち同室で…」
「そうそう。つーことで、コイツの扱いは慣れてるんで。」
「言い方ァ!」
「ふふ、賑やかね。」
「おいおい、俺らのことも忘れんなよー?」
「「すみません!」」
うっかり、いつも通り自分たちの世界に入り込むところだった。古市は顔を赤くする。一際大柄な男性がガハガハと笑い、話し始める。
「じゃ、俺らも自己紹介しないとな。まず俺は佐倉昌行、この班の班長だ。んで、この陰険そうな眼鏡野郎が――いでっ」
「流石に怒りますよ?あー、俺は松永茂、副班長だ。しっかし――古市。初日から遅刻とは、何事だ。自覚が足りないんじゃないか?」
「すみません…」
「ま、まあ…ちょっと体調悪そうでしたので…」
「尚更だ!報告くらいしなさい!」
「松永落ち着けって!」
「すみません。…コホン、今度から気をつけなさい。」
「はい…」
厳しそうな人だ、と古市は感じた。いや、自己管理がなっていなかったのが問題なのだが。そんな中、1人の女性が控えめに挙手をした。
「あっあの!私も、良いでしょうか…?」
「勿論だ。」
「はい…私は雪野咲穂といいます。…まだ、三級局員ですが…」
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