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雪野はショートヘアの美人だ。しかし、穏やかなオーラを纏っており、不思議と落ち着く。先程までの頭痛が軽くなったように感じられた。
雪野が自己紹介を終えると、場が静まり返る。
「…あれ、これで全員ッスか?」
「ええ、はい。」
「うちはオマエら入れて6人だぞ?」
「え、少な――」
「坂本!」
「いや、良いんだ。こんなもんさ。」
驚いた。こんなにも少ないのか。――古市と坂本の感想は、それに尽きる。2人が啞然としていると、他の班からヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
「ねえ見た?γのくせに二人も新人取ってるんだって?贅沢〜」
「バカいえ、1人は遅刻魔だぞ?どうせろくでもないに決まってる。」
「何せ“オワコンのγ”だからなァ…どうしようもない“落ちこぼれ”。だから人は少ないし、事件もあんまり――」
「バーカ、聞こえんだろ。」
「…何だアイツら、俺黙らせて――」
「坂本ストップ!」
佐倉たちが坂本を静止する。が、古市も気持ちは分からんでもなかった。先輩たちは、皆黙り込んでいる。反論もしない。貶されているのに、良いのか?と――そこで、古市は場の空気を変えようと、先程から気になっていたことを聞くことにした。
「あの、すっごく話変わるんですけど…三級とか、階級って何ですか?」
「階級?…あっ、私言ってました?」
「ユキちゃん言ってたよー。けど訓練校じゃ習ってないと思うよ…。」
「あっ、すみません!いつものノリで…」
(かわいいな、この人…)
先程までの険悪ムードは、雪野の天然のおかげですっかり消えていた。フッと笑い、安藤が再び話し始める。
「階級は結構重要よ?まず三級から始まって、二級で単独での出張ができるようになって、一級になると完全単独任務もできるの。役職も一級からなれるようになるわ。班長は二級でもなれるけどね。」
「成程…では、皆さんの階級は…?」
「アタシは二級よ。んで、班長と松永さんは一級。二人も局員証に書かれてる筈よ。試しに確認してみて。」
「「はーい」」
「あっ、待――」
佐倉が何か言いたげだが、古市たちは自らの局員証を探すのに夢中だ。局員証をそれぞれ見る。が、古市は目に映ったものに疑問を抱く。
(…あれ、さっきの説明と違うような…坂本は何ともなさそうだけど…)
「坂本、一応見せて。」
「は?ちゃんと三級ってあるけど。どれ見せろ…は?二級…?」
「「えっ…!?」」
新人である筈の古市の物には、何故か二級と記載がある。γ班だけでなく、他の班からもどよめきが起こる。どうしよう、また浮いてしまうのではないか。バグならば良いのだが――古市は、一人顔をしかめていた佐倉に声を掛ける。
「佐倉班長、こういうことってあるんですか?バグとかじゃなくて?」
「…ああ、ガチだ。稀にあるらしいんだ。入局時点で功績やらスペックやらがイカれてるヤツはな、二級スタートのことがあるんだ。オマエ、何かやってたのか?」
「いや、特に何も…」
「無くはねェだろ。まずアレが――」
「待て、それは後でも良いだろう。此処じゃ目立ちすぎる。」
「ッス。」
佐倉の一声で、徐々に静かになっていく。が、坂本は「1ついいスか」と返した。
「俺とコイツは同室で、コイツの扱いなら慣れてます。――俺から見ても、コイツは“バケモン”です。きっとγの役に立ちます。」
「…そうか。なら心配なさそうだな。よしっ、改めてγ班頑張るぞーっ!」
「「オーッ!」」
「元気いいなーアイツら。」
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