Episode.1

4/10
前へ
/113ページ
次へ
坂本のフォローや仲間たちの明るさに、救われた気がした。此処でなら、やっていける。素の自分を受け入れて貰えるかもしれない。初日ながらも、古市はγ班を好きになれた気がした。 「はは、元気で宜しい。ところで早速なんだが、この案件をγ班に頼みたいのだが…」 「お任せください!」 「佐倉班長、あんなに啖呵きって大丈夫なんですか?」  此処はγ班のブース、他の班よりは狭いが仕事には十分な広さがある。古市は先輩たちと共に、此処で事件の情報を整理していた。他の班も、それぞれの案件に取り掛かっている所だ。 「まあ、何とかなるだろ。人手も増えたし。」 「まーたそんなこと言って。でも古市くんとか凄そう。」 「いや、そんな期待されても困りますって…」 「おい、そろそろ概要説明良いか?」 「「大丈夫でーす」」 松永がホワイトボードを見せながら言う。ホワイトボードには数枚の写真と綺麗な字でまとめられており、とても見やすい。松永がまとめておいたものらしい。 「やっぱ松永のは見やすいなァ!」 「佐倉さん、ありがとうございます。――今回の事件は、深川の6番街で起きた殺人事件だ。サラリーマンの立石さんが殺害されたとのことで、奥さんから通報があった。死因は腹部を刺されたことによる失血死だ。発見現場はアパートの外らしい。」 「帰る途中で…ですかね?」 「酷い…家で休みたかっただろうに…」 「まあ、各自思う所はあるだろうが…ひとまず現場に向かってもらう。分担は――そうだな、安藤、それから新人2人。オマエらは現場検証へ。俺も向かう。松永と雪野は周辺住民への聞き込みを頼む。」 「「了解」」 佐倉の指示に従い、γ班はパトカーに乗り込んだ。運転は安藤が行う。そんな車内で、佐倉は古市に声を掛けた。 「古市。――その、さっき言ってた件、詳しく聞いてもいいか?」 「ええ、はい。…あの、笑わないでくださいね?中々信じられないとは思いますが…」 「笑わないさ。なあ、皆?」 「ああ。」 「勿論です。」 「あ、古市捲っとけ。オマエそういう服苦手だろ。」 「あ、うん。」 資料を見る前に着替えていた古市は、Yシャツの袖を捲る。制服のような長袖の服は、苦手なのだ。古市は話を続ける。 「…それで?」 「ああ、はい。…実は僕、力があるんです。その…さっきまで頭痛があったんですけど、それも副作用といいますか…そんな感じなんです。」 「成程、能力者なのか…それにしても、“記憶”ってのは?」 「例えば、朝ごはんの内容とか、子どもの頃の遊びだとか、そういうのは記憶として頭の中に残りますよね。触ったら、それが全部映像として流れるんです。…とはいっても、証明が難しいんですけど…」 「…何だそれ、面白ェな!ますます興味あるわ!」 「凄いです、私たち皆能力なんて持っていませんし…」 「まあ、それが普通だからな。でも実際に見てみないと分からないぞ?」 仲間が興奮する中、冷静に松永が正論を言う。まあ、共有したりはできないからな…と考えていると、雪野が突然声を上げた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加