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坂本のフォローや仲間たちの明るさに、救われた気がした。此処でなら、やっていける。素の自分を受け入れて貰えるかもしれない。初日ながらも、古市はγ班を好きになれた気がした。
「はは、元気で宜しい。ところで早速なんだが、この案件をγ班に頼みたいのだが…」
「お任せください!」
「佐倉班長、あんなに啖呵きって大丈夫なんですか?」
此処はγ班のブース、他の班よりは狭いが仕事には十分な広さがある。古市は先輩たちと共に、此処で事件の情報を整理していた。他の班も、それぞれの案件に取り掛かっている所だ。
「まあ、何とかなるだろ。人手も増えたし。」
「まーたそんなこと言って。でも古市くんとか凄そう。」
「いや、そんな期待されても困りますって…」
「おい、そろそろ概要説明良いか?」
「「大丈夫でーす」」
松永がホワイトボードを見せながら言う。ホワイトボードには数枚の写真と綺麗な字でまとめられており、とても見やすい。松永がまとめておいたものらしい。
「やっぱ松永のは見やすいなァ!」
「佐倉さん、ありがとうございます。――今回の事件は、深川の6番街で起きた殺人事件だ。サラリーマンの立石さんが殺害されたとのことで、奥さんから通報があった。死因は腹部を刺されたことによる失血死だ。発見現場はアパートの外らしい。」
「帰る途中で…ですかね?」
「酷い…家で休みたかっただろうに…」
「まあ、各自思う所はあるだろうが…ひとまず現場に向かってもらう。分担は――そうだな、安藤、それから新人2人。オマエらは現場検証へ。俺も向かう。松永と雪野は周辺住民への聞き込みを頼む。」
「「了解」」
佐倉の指示に従い、γ班はパトカーに乗り込んだ。運転は安藤が行う。そんな車内で、佐倉は古市に声を掛けた。
「古市。――その、さっき言ってた件、詳しく聞いてもいいか?」
「ええ、はい。…あの、笑わないでくださいね?中々信じられないとは思いますが…」
「笑わないさ。なあ、皆?」
「ああ。」
「勿論です。」
「あ、古市捲っとけ。オマエそういう服苦手だろ。」
「あ、うん。」
資料を見る前に着替えていた古市は、Yシャツの袖を捲る。制服のような長袖の服は、苦手なのだ。古市は話を続ける。
「…それで?」
「ああ、はい。…実は僕、“記憶”を見る力があるんです。その…さっきまで頭痛があったんですけど、それも副作用といいますか…そんな感じなんです。」
「成程、能力者なのか…それにしても、“記憶”ってのは?」
「例えば、朝ごはんの内容とか、子どもの頃の遊びだとか、そういうのは記憶として頭の中に残りますよね。触ったら、それが全部映像として流れるんです。…とはいっても、証明が難しいんですけど…」
「…何だそれ、面白ェな!ますます興味あるわ!」
「凄いです、私たち皆能力なんて持っていませんし…」
「まあ、それが普通だからな。でも実際に見てみないと分からないぞ?」
仲間が興奮する中、冷静に松永が正論を言う。まあ、共有したりはできないからな…と考えていると、雪野が突然声を上げた。
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