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彼女のお墓は、港の見える丘の上でとても素敵なところだった。
海からの風が心地よく、周りには花々が風に揺れていた。
私達は白いユリの花束を、彼女の前にお供えした。
目を閉じて、手を合わせていると、何処からか白く可愛い小鳥がお墓の上に止まった。
その鳥はチュンチュンと声を出していることに気づいた。
それは、まるで私たちに何か話をしているように感じる。
「…圭吾、奥様からのメッセージかな…?」
私はその鳥に手を差し出すと、ちょこんと私の手に乗ってくれた。
その鳥は、とても綺麗な声で歌っているようにも聴こえる。
その時、後ろから誰かの声が聞こえた。
「…恵美ちゃん、彼女は“あなたに会えてよかった”って言ってるよ。」
その声に驚いて振り返ると、早乙女さんがそこに立っていた。
「早乙女さん!」
早乙女さんは微笑みながら、私の手に乗っている小鳥を撫でた。
「圭吾、恵美ちゃん、彼女は今日だけ小鳥になって二人に会いたいと、僕にお願いに来てくれたんだ。」
「では…やはり…この小鳥は…奥様なんですね…」
小鳥は私の手から、圭吾の肩に飛び移った。
圭吾の耳元に何か話しかけているようにも見える。
私には、何を話しているかは分からないけど、圭吾は優しい目で話を聴いていた。
「…早乙女さん、奥様に伝えて頂けますか?私は必ず龍崎さんを幸せにしますと…伝えてください。」
早乙女さんは笑みを浮かべて頷くと、小鳥に向かって話し始めた。
暫くすると、その鳥は私達の上を大きく旋回するように飛んだのだ。
そして、真っすぐに力強く大空に飛んで行ってしまった。
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