新しく動き出す

1/4
前へ
/131ページ
次へ

新しく動き出す

私はいつものように、会社近くのカフェでコーヒーをテイクアウトして会社に向かった。 会社のロビーでエレベーターを待っていた。 「鈴木さん、おはようございます。」 京子が可愛いピンクのコートを着て、駆け寄って来た。 「西条さん、おはようございます。ピンクのコート、お似合いですね。」 嬉しそうに京子が笑みを浮かべた。 「これ、買ったばかりのお気に入りなんです。…そうだ、もしよければ今日のランチは一緒に行きませんか?」 「嬉しいです。西条さんとランチ楽しみにしていますね。」 私はとても嬉しかった。 京子の記憶から一度消えてしまったが、こうしてまた新たに友人になれそうだ。 お昼近くになり、京子からメールが来た。 京子のランチ前メールはとても懐かしく感じる。 『今日は駅の近くのイタリアンにしませんか?』 『もちろん、OKです。楽しみです。』 駅の近くのイタリアンは、以前に京子とよく行っていた場所だ。 また京子と行かれることがとても嬉しい。 「鈴木さん。ここはトマトソースのパスタが人気ですよ。私も迷うな、うーん、どれにしようかな。」 …京子、ここのパスタ美味しいよね…知っているよ。 「では、西条さんのお勧めのトマトソースのパスタにします。」 …私は記憶から消えても、すべて失ったわけじゃないんだ。 「あの…鈴木さん、よかったら私は京子でいいですよ…同じ年だしね!」 「西条さん、では私は恵美でお願いします。」 「では…恵美!」 「京子!」 私は顔が緩んでしまうほど嬉しくて仕方がない。 「なんか、不思議なんだけどね。恵美って呼ぶのが、すごくしっくりくるんだよね。前から読んでいたみたいだよ!」 …うん…そうだよ…京子はそう呼んでくれてたよ! ランチの帰り道、後ろから誰かに肩を叩かれた。 「…早乙女さん…!!」 京子は急に現れたイケメンに、驚いている。 すかざず、可愛い笑顔を作るのは京子の得意技だ。 …そうか…京子は早乙女さんも覚えてない。 「早乙女さん、今日は会社に用事ですか?」 「うん。先日の事件の時、犯人を罰してくれたら、契約する約束だからね…隣の美人さんは…?」 …さすが…早乙女さん…女心がわかる。 京子は素早く可愛い顔を作って自己紹介をする。 「あっ、同じ営業部の西条京子です。鈴木さんとは同期入社なんですよ!」 「西条さん、早乙女といいます。よろしくね…じゃあ、僕は先に行くね。」 早乙女さんは、眩しい笑顔で私達にウィンクをすると、急いでいるようで先に会社へと向かった。 早乙女さんが去ったあと、思った通りの京子の反応だった。 「め…恵美…今の人…誰…?すごいイケメン!!」 私は思わずクスッと笑ってしまった。 …記憶から消されてしまったけど、京子と友達に戻れたし、私は全て失った訳じゃない。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加